『プロデューサーシップのすすめ』販売開始

2021年8月20日より、新刊『プロデューサーシップのすすめ – AI 時代にヒトが価値を 〈紡ぐ〉 ために』が発売となりました。ブリコラージュ的な編集部の編成、リソース不足、印刷機の刷新・・・さまざまな理由で発売時期が大きくずれ込みましたが、備えを尽くしての販売開始です。

本書は、「研究・イノベーション学会 プロデュース研究分科会」および「NPO法人ZESDA」が主催した、「プロデュース人材育成講座」というセミナーの講演録を書籍むけに再編したものです。では、そもそも「プロデューサーシップ」という聴きなれない言葉は何を意味するのでしょうか?

 

「アントレプレナーシップ」の先にあるものとは?

起業家になるためのニーズはここ数年でさらに加熱しており、スタートアップ企業を作り出す技術は、「アントレプレナーシップ」として体系化されてきました。「イノベーション=起業家」というイメージは定着しつつあり、ソニー生命の「将来なりたい職業ランキング 2021」(高校生・男子)では、「社長などの会社経営者・起業家」が2位にランクインしています。

その一方で、イノベーションを起こす起業家たちは、本当に自らの力のみで新たなビジネスを作り出すことができるのでしょうか?

イノベーションとは、社会から孤立した研究所や企業、イノベーターが独善的に生み出すべきものではなく、極めて社会的なエコシステム(生態系)のなかで、生態系全体の祝福を受けながら、ある日ぽとりと落ちてくる果実である

『プロデューサーシップのすすめ』序論より

これまで、起業家にスポットライトが当てられる一方で、彼らを支えた「仕掛け人」ともいうべき人々の動きには、あまり注目が向けられてきませんでした。

しかし、一つのビジネスを作り出すためには、経験、情報、スキル、人材、人脈、資金、信用など、さまざまな資源が必要になります。これらの「資源」の調達も、確かにアントレプレナーシップの一環といえるでしょう。しかしそれを起業家が一手に担うことは、至難の業です。

イノベーションを起こす起業家の背後には、知識を与える専門家、資金を与える投資家、アドバイスを与えるメンターなど、多くの仕掛け人たちがいる、と考えた方が自然なのではないでしょうか。本書が提起する問題は、「イノベーションを起こすためには起業家だけではなく、実は仕掛け人の方が大事なのでは?」というポイントにあります。積極的にイノベーションを起こすための「アントレプレナーシップ」の先に、まったく別の役割や技術があるのではないか、ということです。

 

「プロの仕掛け人」になる技術 

イノベーションが生み出される環境には、起業家のほかにも投資家、専門家、メンター、従業員などのさまざまな人々が入り乱れています。スタートアップ企業の規模が小さいうちは、なし崩し的な経営でも通用するかもしれません。しかしプロジェクトの規模が大きくなるにつれて、それらの人々の利害関係をうまくすり合わせて調整するということが必須になります。そのような人と人とをうまくつなぎ合わせる役割を担う人は、英語で「触媒」を意味する「カタリスト」と呼ばれます。

イノベーションのプロセスの理解においては、イノベーターのみならず、むしろイノベーターを取り巻くエコシステム上のさまざまなアクターの狙いや役割もまた重視されるべきです。ならば、イノベーションは、カタリストたちがイノベーターにさまざまな価値を注ぎ込んできた群像劇としてこそ語られるべきではないでしょうか

『プロデューサーシップのすすめ』序論より

「イノベーション」といわれているものの中心には起業家がおり、彼らをとりまくさまざまな関係者がいます。しかしそれだけでは不十分であり、「カタリスト」が彼らをつなぎ合わせることによって、はじめて目覚ましい成果があがるのだということです。

イノベーションが持続的に生成される団体には、「カタリスト」の存在が欠かせません。そのように起業家に「資源」を注ぎ込むための調整をするための技術が「プロデューサーシップ」なのです。アントレプレナーシップが「プロのイノベーター」になるための技術であるとすれば、「プロデューサーシップ」とはいわば「プロの仕掛け人」になるための技術だと言えるでしょう。

本書はイノベーション・エコシステムの運営や構築に関わった「プロデューサー」たちの実例をもとに、「プロデューサーシップ」の本質を解きあかすことを試みます。AIが「部分最適」を遂行していく時代は、すでに到来しています。その中でヒトに残された仕事は、「全体最適」を実現することにほかなりません。そのために、今こそ「プロデューサーシップ」を真剣に考えるべき時がきたのです。

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